最終更新: 2026-08-06
2024年時点で、日本全国のクラフトビール醸造所は950ヵ所を超えました。1994年の地ビール解禁から30年、かつて200軒を下回っていた頃と比べると実に5倍近い規模に成長しています。
この記事では、醸造所数の年推移(1994〜2024年)、都道府県別の醸造所数一覧、地域ごとのブルワリー事情をデータとともに解説します。ビール業界・醸造を志す方の参考に、また業界調査・レポートの引用データとしてご活用ください。毎年8月に更新します。
日本のクラフトビール醸造所数の推移(1994〜2024年)
日本のクラフトビール史は、1994年の酒税法改正を起点とします。それまで「ビール製造免許」は年間最低2,000kL以上の製造能力が必要で、事実上大手4社しか参入できませんでした。改正によって最低製造量が60kLに引き下げられ、小規模なブルワリーが参入できるようになりました。
| 年 | 全国の醸造所数(目安) | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 1994年 | 0(解禁前) | 酒税法改正。地ビール製造が可能に |
| 1996年 | 約100 | 地ビールブーム第一波。各地で相次ぎ開業 |
| 1998年 | 約250 | ブームのピーク。全国で地ビール館が乱立 |
| 2002年 | 約200 | ブーム落ち着き。廃業も相次ぐ。淘汰期 |
| 2008年 | 約200 | 低迷期。「地ビール」から「クラフトビール」へ名称移行 |
| 2014年 | 約250 | クラフトビール再興期。米国文化の影響が拡大 |
| 2018年 | 約400 | ビールの定義変更(発泡酒→ビール区分拡大)でさらに参入加速 |
| 2020年 | 約500 | コロナ禍でテイクアウト・EC販路が発達。新規参入は継続 |
| 2022年 | 約700 | 1年間で138軒が新規開業(過去最高水準) |
| 2023年 | 約850 | 上半期だけで41軒開業 |
| 2024年 | 950超 | 引き続き増加傾向。地方への分散も顕著 |
出典:国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」、きた産業株式会社による継続調査(1995年〜)
2018年の酒税法改正は大きな転換点でした。「発泡酒」として分類されていた多くのクラフトビールが「ビール」に区分変更され、税制・ブランディング両面でのメリットが生まれました。これが第二次クラフトビールブームの追い風となっています。
都道府県別 クラフトビール醸造所数(2024年目安)
醸造所数の多い都道府県ほど消費市場の厚みがあり、醸造文化が根付いています。一方、農業・地域資源との連携で地方でも独自の醸造所が育ちつつあります。
| 順位 | 都道府県 | 醸造所数(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 東京都 | 100〜120軒 | 全国最多。クラフトビール消費市場の中心 |
| 2位 | 神奈川県 | 55〜70軒 | 横浜・川崎の都市部+箱根等リゾート地 |
| 3位 | 北海道 | 40〜55軒 | エゾシカやホップ農家との連携が多い |
| 4位 | 大阪府 | 40〜55軒 | 飲食店密度が高くタップルームが多い |
| 5位 | 静岡県 | 35〜50軒 | 茶・伊豆の食材を活用した個性派が多い |
| 6位 | 愛知県 | 35〜50軒 | 名古屋圏の消費市場。地酒蔵との複合も |
| 7位 | 福岡県 | 30〜45軒 | 九州の拠点。博多の飲食文化と親和性高い |
| 8位 | 兵庫県 | 25〜40軒 | 酒造メーカーの転業・副業参入が多い |
| 9位 | 埼玉県 | 25〜35軒 | 東京へのアクセスを活かしたタップルーム戦略 |
| 10位 | 京都府 | 20〜30軒 | 日本酒・清酒文化との融合。インバウンド需要 |
| — | 長野県 | 20〜30軒 | 高原ホップ栽培との連携。リゾート観光客向け |
| — | 沖縄県 | 15〜25軒 | 亜熱帯農作物(シークヮーサー等)活用 |
| — | 岡山県 | 15〜25軒 | 桃・マスカット等地域フルーツの活用 |
| — | 宮城県 | 15〜20軒 | 東北初のクラフトビール醸造所が多数 |
| — | 広島県 | 15〜20軒 | 牡蠣・レモン等の瀬戸内食材との掛け合わせ |
数値はきた産業・各種業界調査の集計値を参考に推計。実際の開業・閉業により変動します。
地域別 ブルワリー事情と特徴
東日本:東京一極集中から地方分散へ
東京・神奈川・埼玉の首都圏3都県で全国の約20〜25%の醸造所が集中しています。ただし近年は「地方移住×クラフトビール」という組み合わせで長野・新潟・岩手・青森などの地方移住者が醸造所を開く事例が増え、都市集中は緩和傾向にあります。
北海道:ホップ生産との一体化
北海道上富良野町はかつて国産ホップ生産の中心地でした。近年は地域ブルワリーとホップ農家が直接契約を結ぶ「農業との連携モデル」が注目されており、北海道産ホップ100%のビールを販売するブルワリーも登場しています。北海道のブルワリー数は約40〜55軒(全国3位水準)で、観光需要にも支えられています。
近畿:日本酒蔵の転業・副業が急増
兵庫・京都・滋賀の日本酒蔵が「デュアルブリュワリー(日本酒+クラフトビール)」モデルを採用する事例が増えています。酒蔵の設備・衛生管理ノウハウをビール醸造に転用しやすいためで、既存の日本酒ファンにクラフトビールを訴求する販路としても機能しています。
九州・沖縄:地域農産物との融合
福岡・熊本・鹿児島などでは柑橘類・さつまいも・黒糖など地域特産物を使った個性的なビールが多く作られています。沖縄は亜熱帯気候に適したビールとしてシークヮーサー・ゴーヤを使ったビールが定番化しています。
醸造所数が増え続ける3つの背景
1. 参入障壁の低下(酒税法改正)
1994年の60kL規制緩和以降、2018年の酒税法改正でビールの定義が拡大(フルーツや野菜の副原料が認められるようになった)。これによってクリエイティブな製品開発の自由度が増し、新規参入の誘因がさらに高まりました。
2. 消費者のビールリテラシー向上
スマートフォンとSNSの普及で、消費者が「自分好みのビーススタイル」を発見・共有するようになりました。IPA・スタウト・ヴァイツェンなどスタイル名で注文するユーザーが増え、クラフトビールの付加価値が伝わりやすくなっています。
3. 市場規模の拡大
日本のクラフトビール市場規模は2024年時点で急速に成長しており、2025〜2033年にかけて年率12%超の成長が予測されています(市場調査会社推計)。飲食店のタップビール需要・EC販売・ギフト需要が三位一体で市場を押し上げています。
醸造所の廃業・閉業の動向
増加一方に見えるクラフトビール業界ですが、廃業・閉業も相当数あります。東京商工リサーチの調査によると、主要地ビールメーカーの出荷量は酷暑・物価高・原料高の影響で2024年に4年ぶりに減少に転じた局面もありました。
生き残る醸造所の共通点は「タップルームを自営して利益率を高める」「地域農産物と組む独自性」「EC・サブスクで固定客を持つ」の3点とされています。単なるビール製造だけでなく、体験・観光・コミュニティとしての価値提供が生き残りの鍵です。
よくある質問
Q. クラフトビール醸造所の「数」を正式に公表している機関はありますか?
国税庁が「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」としてビール製造免許件数を公表しています。ただし免許取得数と実際の醸造所数は一致しない(休眠免許・未稼働を含む)ため、きた産業のような民間調査機関の実態ベースのカウントも広く参照されています。
Q. 都道府県別の醸造所数の最新データはどこで確認できますか?
きた産業株式会社(https://kitasangyo.com/beer/MAP.html)がほぼリアルタイムで更新している全国醸造所リストが最も詳しいとされています。また「My CRAFT BEER」等の醸造所データベースサイトも参考になります。
Q. 醸造所数が最も多い都道府県はどこですか?
東京都が全国最多で100〜120軒程度。次いで神奈川・北海道・大阪が続きます。
Q. 地方でも醸造所を開業しやすいですか?
開業コストの面では地方のほうが物件費・人件費が低い場合があります。一方で消費市場が小さいため、観光・EC・飲食店への卸を組み合わせるビジネスモデルが現実的です。
Q. クラフトビール醸造所を見学・訪問したい場合は?
タップルーム(醸造所直営の飲食スペース)を持つ醸造所は全国に多数あります。事前予約が必要な場合もあるため、各醸造所のSNSや公式サイトで確認してください。
関連記事: タップルームとは?ビアバー・ブルーパブとの違い・楽しみ方を完全解説【2026年版】
まとめ
日本のクラフトビール醸造所は2024年時点で950ヵ所を超え、30年前の地ビール解禁時と比べると5倍近い規模に成長しました。都道府県別では東京が全国最多(100〜120軒)を維持しつつも、地方への分散が進んでいます。
2022年度に1年間で138軒が新規開業するなど成長スピードは衰えていませんが、廃業・閉業も相当数あり、差別化・収益化モデルの確立が生き残りの条件となっています。
データは毎年8月に更新します。醸造所数の変動があった場合はコメント欄でご連絡いただけると幸いです。
参考情報
- 国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizogaikyo/10.htm
- きた産業株式会社「クラフトビール全国醸造所リスト」https://kitasangyo.com/beer/MAP.html
- 東京商工リサーチ「主要地ビールメーカーの出荷量調査」
- BrewHub 関連記事:[東京のクラフトビールブルワリー完全ガイド](https://brewhub.jp/brewery/tokyo-craft-beer-brewery/)
- BrewHub 関連記事:[北海道のクラフトビール醸造所ガイド](https://brewhub.jp/brewery/hokkaido-craft-beer-brewery/)
引用・転載について: 本記事のデータを引用・転載する場合は、出典として「BrewHub(https://brewhub.jp)」を明記の上、リンクをお願いします。データは毎年更新予定です。


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