「クラフトビールに興味はあるけれど、苦いビールは少し苦手」「フルーティーで飲みやすいIPAを探している」――そんな方にぜひ試していただきたいのが、ヘイジーIPAです。
グラスに注いだ瞬間に広がる白く濁った液体。口に含むと、まるでトロピカルジュースのようなジューシーな果実感が押し寄せてきます。従来のIPAとは一線を画すこのビアスタイルは、2010年代後半からクラフトビール界を席巻し、2026年現在も人気が衰えることを知りません。
本記事では、醸造技術の視点からヘイジーIPAの「濁り」の正体を科学的に解説するとともに、国産ブルワリーを中心としたヘイジーIPAおすすめ12選を厳選してご紹介します。選び方のポイント、フードペアリング、美味しい飲み方まで網羅していますので、ぜひ最後までお読みください。
ヘイジーIPAとは?濁りの正体と誕生の背景
New England発祥の革命的ビアスタイル
ヘイジーIPA(Hazy IPA)は、別名「ニューイングランドIPA(NEIPA)」とも呼ばれ、その名のとおりアメリカ東海岸のニューイングランド地方で誕生したビアスタイルです。
2003年、バーモント州のブルワリー「The Alchemist」が初醸造した「Heady Topper」が、このスタイルの先駆けとされています。その後、マサチューセッツ州の「Tree House Brewing」やコネチカット州の「Other Half Brewing」など、東海岸のブルワリーが次々とこのスタイルのビールを発表し、瞬く間にクラフトビール愛好家の間で話題となりました。
従来のIPA(特にウエストコーストIPA)が「クリアな見た目」と「鋭い苦味」を美徳としていたのに対し、ヘイジーIPAは「濁り」と「ジューシーさ」を積極的に追求するという、まさに真逆のアプローチを採った革命的なスタイルです。
なぜ濁っているのか――醸造科学の視点から
ヘイジーIPAの特徴的な濁り(ヘイズ)は、偶然の産物ではなく、醸造工程で意図的に生み出されたものです。その濁りの正体を、醸造科学の視点から紐解いてみましょう。
1. ドライホッピングによるタンパク質とポリフェノールの結合
ヘイジーIPAの醸造では、発酵後にホップを大量に投入する「ドライホッピング」が重要な工程となります。通常のIPAでもドライホッピングは行いますが、ヘイジーIPAではその量が格段に多くなります。ホップに含まれるポリフェノール(タンニンなど)が、麦汁中のタンパク質と結合してコロイド状の微粒子を形成し、これが光を散乱させることで白濁した外観を生みます。
2. 凝集性の低い酵母の使用
一般的なエール酵母は発酵終了後にタンクの底に沈殿する「高凝集性」の性質を持ちますが、ヘイジーIPAでは「低凝集性」の酵母が使用されることがあります。この酵母は発酵後もビール中に浮遊しやすく、濁りの一因となります。さらに、酵母が生み出すエステル(果実香の成分)が、ヘイジーIPAのフルーティーな香りに寄与しています。
3. オーツ麦と小麦の使用
ヘイジーIPAのレシピには、通常の大麦麦芽に加えて、オーツ麦(オートミール)や小麦が副原料として使用されます。これらの穀物はタンパク質含有量が高く、ビールの濁りを安定させるとともに、口当たりをなめらかでクリーミーなものにする効果があります。オーツ麦の配合割合は全体の10〜20%程度が一般的です。
世界的ブームの理由
ヘイジーIPAが世界中で爆発的な人気を獲得した理由は、大きく3つあります。
第一に、苦味を抑えたジューシーな味わいが、従来のIPAの苦味を敬遠していた層を取り込むことに成功しました。IBU(国際苦味単位)で見ると、アメリカンIPAが40〜70 IBUであるのに対し、ヘイジーIPAは20〜40 IBU程度と穏やかです。
第二に、SNS映えする美しい外観です。グラスに注いだときの黄金色に輝く濁りは、InstagramをはじめとするSNSで拡散されやすく、若い世代を中心にクラフトビール文化への入り口となりました。
第三に、日本国内でも多くのブルワリーがこのスタイルに参入し、入手しやすくなったことが挙げられます。2020年代に入ってからは、コンビニエンスストアでもヘイジーIPAスタイルの缶ビールが並ぶようになり、認知度は急速に高まっています。
ヘイジーIPAと通常のIPAの違いを徹底比較
「IPAは知っているけれど、ヘイジーIPAと普通のIPAは何が違うの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。ここでは、ヘイジーIPAとアメリカンIPA(ウエストコーストIPA)の違いを、醸造工程から味わいまで7つの観点で比較します。
| 比較項目 | ヘイジーIPA | アメリカンIPA(ウエストコーストIPA) |
| 外観 | 白〜黄金色の濁り(ヘイズ) | 琥珀色〜銅色でクリア |
| 苦味(IBU) | 20〜40 IBU(穏やか) | 40〜70 IBU(しっかり) |
| ホップの使い方 | ドライホッピング重視(冷却後〜発酵中に大量投入) | ボイル時投入が中心(苦味を引き出す) |
| 味わい | ジューシー、トロピカルフルーツ感、クリーミー | シャープな苦味、松脂感、ドライな後味 |
| 酵母 | 低凝集性の酵母(液中に残りやすい) | 高凝集性の酵母(発酵後に沈殿) |
| 副原料 | オーツ麦・小麦を多用(タンパク質でヘイズを安定化) | モルト中心(クリアな仕上がりを重視) |
| ABV(アルコール度数) | 5〜8%(幅広い) | 5〜7%(比較的安定) |
この比較からわかるように、両者は同じ「IPA」という名前を冠していても、醸造アプローチが根本的に異なります。アメリカンIPAがホップの苦味を前面に打ち出すのに対し、ヘイジーIPAはホップの香り(アロマ)とフレーバーを最大限に引き出すことに注力しています。
ヘイジーIPAでよく使用されるホップ品種には、Citra(シトラ)、Mosaic(モザイク)、Galaxy(ギャラクシー)などがあります。これらのホップは、マンゴー、パッションフルーツ、グレープフルーツ、パイナップルなどのトロピカルフルーツを連想させる華やかな香りが特徴で、ドライホッピングで使用することでその香りを最大限に活かすことができます。
IPAについてさらに詳しく知りたい方は、「IPAビールのおすすめ銘柄と選び方」もあわせてご覧ください。アメリカンIPA、ウエストコーストIPA、イングリッシュIPAなど、各スタイルの特徴と銘柄を幅広く紹介しています。
ヘイジーIPAおすすめ12選【2026年最新】
ここからは、国産ブルワリーを中心に、BrewHub編集部が厳選したヘイジーIPAおすすめ12選をご紹介します。初心者の方でも楽しめるものから、マニアも唸る本格派まで幅広くセレクトしました。
| No. | 商品名 | ブルワリー | ABV | 味わいの特徴 | 価格帯(税込目安) |
| 1 | ヘイジーIPA | 伊勢角屋麦酒(三重) | 6.5% | Citra・Mosaicホップによる鮮烈なトロピカル感。厚みのあるボディとシルキーな口当たり | 550〜650円/缶 |
| 2 | ねこにひき | 伊勢角屋麦酒(三重) | 8.0% | 猫のラベルが目印。米国Culmination Brewingとのコラボ作品。トロピカルで甘いマンゴーのようなアロマが特徴 | 500〜600円/缶 |
| 3 | 僕ビール、君ビール。満天クライマー | ヤッホーブルーイング(長野) | 5.5% | 全国のローソンで購入可能な入手性が魅力。パッションフルーツとマンゴーの爽やかな香り | 280〜300円/缶 |
| 4 | Haze | ブリュードッグ(スコットランド) | 5.0% | パイナップルとグレープフルーツのフレッシュな香り。軽めのボディで飲みやすく、海外ヘイジーIPAの入門に最適 | 450〜550円/缶 |
| 5 | ヘイジーIPA | 六甲ビール(兵庫) | 6.0% | 神戸の老舗ブルワリーが手がける一杯。マンダリンオレンジを思わせる香りと滑らかな舌触り | 550〜650円/瓶 |
| 6 | Hazy IPA | 志賀高原ビール(長野) | 6.5% | 自家栽培ホップも活用する志賀高原ならではの複雑なアロマ。苦味と甘みのバランスが秀逸 | 600〜750円/瓶 |
| 7 | Hazy IPA | ミッケラー(デンマーク) | 6.0% | 世界的ファントムブルワリーによる洗練された一杯。ピーチとパッションフルーツの繊細な香り | 600〜800円/缶 |
| 8 | 時鐘江戸俤(ときがねえどのおもかげ) | COEDO(埼玉) | 7.0% | 川越の伝統と革新を融合させたCOEDOの意欲作。濃厚なトロピカル感と高いABVが特徴 | 500〜600円/缶 |
| 9 | Hazy IPA | Far Yeast Brewing(山梨) | 6.0% | 東京の森(奥多摩)から発信するブルワリー。レモングラスのような爽快なアロマとクリーンな後味 | 500〜650円/缶 |
| 10 | Hazy | WCB(West Coast Brewing)(静岡) | 6.5% | 静岡・用宗を拠点とするブルワリー。Galaxyホップを贅沢に使用し、パッションフルーツの奔流が口中に広がる | 600〜800円/缶 |
| 11 | 一期一会 | 京都醸造(京都) | 6.0% | ベルギー酵母の個性とアメリカンホップの華やかさが融合。スパイシーさとフルーティーさが共存する唯一無二の味わい | 550〜700円/瓶 |
| 12 | ヘイジーIPA | 福岡クラフト(福岡) | 5.5% | 九州発のヘイジーIPA。マンゴーとグアバを思わせる南国フレーバーで、軽やかな飲み口が特徴 | 500〜600円/缶 |
各銘柄の詳細レビュー
1. 伊勢角屋麦酒 ヘイジーIPA
伊勢角屋麦酒は、三重県伊勢市に拠点を構える1997年創業のクラフトブルワリーです。World Beer Awardsなど国際的なビールコンペティションで数々の受賞歴を誇り、日本を代表するブルワリーの一つとして知られています。同社のヘイジーIPAは、CitraとMosaicという2種類のアメリカンホップをドライホッピングで贅沢に使用しており、グラスに注いだ瞬間からマンゴーやパッションフルーツの華やかな香りが立ち上ります。口に含むと、オーツ麦由来のシルキーな口当たりとともに、ジューシーなフルーツフレーバーが広がります。苦味は穏やかで、フィニッシュは爽やか。ヘイジーIPAの魅力を余すことなく体現した一杯といえるでしょう。
2. 伊勢角屋麦酒 ねこにひき
同じく伊勢角屋麦酒から、ユニークな猫のイラストが描かれたラベルが印象的な「ねこにひき」。ABV 8.0%と高めのアルコール度数が示すとおり、飲みごたえのあるヘイジーIPAです。米国オレゴン州ポートランドのCulmination Brewingとのコラボ作品で、トロピカルで甘いマンゴーのようなアロマが特徴です。ホップを通常のペールエールの3倍使用しており、濃厚なフレーバーと力強い味わいが魅力の一杯です。
3. ヤッホーブルーイング 僕ビール、君ビール。満天クライマー
「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイングが手がけるヘイジーIPAスタイルの缶ビールです。全国のローソンで購入できるという圧倒的な入手性が最大の魅力で、クラフトビールを気軽に試したい方の入門として最適です。パッションフルーツとマンゴーの爽やかな香りが広がり、IPAとしての苦味は控えめ。価格も300円前後と手頃で、普段飲みにも向いています。
4. ブリュードッグ Haze
スコットランド発のクラフトビール大手ブリュードッグが、ヘイジーIPAブームを受けて開発した銘柄です。パイナップルとグレープフルーツのフレッシュなアロマが印象的で、ボディは軽めに仕上げられています。ABV 5.0%と控えめなので、アルコール度数を気にする方にも安心です。輸入ビールとしては価格も手頃で、海外ヘイジーIPAの入門編として優れた選択肢です。
5. 六甲ビール ヘイジーIPA
1997年に創業した神戸の老舗マイクロブルワリー、六甲ビールが醸造するヘイジーIPAです。六甲山系の良質な水を使用し、マンダリンオレンジや温州みかんを思わせる柑橘系のアロマが特徴的です。滑らかな舌触りと穏やかな苦味のバランスが絶妙で、関西エリアのクラフトビールファンを中心に高い評価を得ています。
6. 志賀高原ビール Hazy IPA
長野県の山あいに位置する志賀高原ビールは、自家栽培のホップを一部使用することでも知られるこだわりのブルワリーです。同社のHazy IPAは、自家栽培ホップとアメリカンホップをブレンドすることで、他にはない複雑で奥深いアロマを実現しています。苦味と甘みのバランスが秀逸で、飲み進めるごとに新しい表情を見せてくれる一杯です。
7. ミッケラー Hazy IPA
デンマーク・コペンハーゲン発のファントムブルワリー(自社醸造設備を持たず、他の醸造所の設備を借りてビールを製造する形態)であるミッケラー。世界中の醸造所とコラボレーションしながら、常に革新的なビールを生み出し続けています。同社のHazy IPAは、ピーチとパッションフルーツの繊細な香りが特徴で、洗練されたフレーバーバランスはさすがの一言です。
8. COEDO 時鐘江戸俤
埼玉県川越市に本拠を置くCOEDOブルワリーの意欲作です。「時鐘江戸俤(ときがねえどのおもかげ)」というユニークな名前は、川越のシンボルである「時の鐘」に由来しています。ABV 7.0%と今回ご紹介する中では高めのアルコール度数で、濃厚なトロピカルフルーツの風味と厚みのあるボディが楽しめます。ゆっくりと味わいたい一杯です。
9. Far Yeast Brewing Hazy IPA
山梨県小菅村を拠点とするFar Yeast Brewingは、「東京の森から届けるビール」をコンセプトに掲げるブルワリーです。同社のHazy IPAは、レモングラスやライムを思わせる爽快なアロマが特徴で、クリーンな後味が印象的。暑い季節にぴったりの爽快感あるヘイジーIPAです。
10. WCB(West Coast Brewing) Hazy
静岡県静岡市の用宗(もちむね)を拠点とするWest Coast Brewingは、ヘイジーIPA・ジューシーIPAを中心に展開し、日本国内のクラフトビールシーンで急速に存在感を高めているブルワリーです。Galaxyホップを贅沢に使用した同社のHazyは、パッションフルーツの奔流のようなアロマが圧巻。口中に広がるトロピカルな果実感は、一度飲んだら忘れられないインパクトがあります。
11. 京都醸造 一期一会
京都醸造は、「ベルギーとアメリカの醸造文化の融合」をコンセプトに掲げるブルワリーです。「一期一会」は、ベルギー酵母が生み出すスパイシーなフェノール香と、アメリカンホップの華やかなシトラスアロマが見事に調和した、唯一無二のビールです。厳密にはヘイジーIPAのカテゴリーに収まりきらない個性を持っていますが、その濁った外観とジューシーなフレーバーは、ヘイジーIPA好きの方にも強くおすすめできます。
12. 福岡クラフト ヘイジーIPA
九州・福岡から発信されるヘイジーIPAです。マンゴーとグアバを思わせる南国フレーバーが特徴で、ABV 5.5%と軽やかな飲み口に仕上がっています。九州地方のクラフトビール文化の広がりを感じさせる一杯で、地元の料理との相性も抜群です。
ヘイジーIPAの選び方4つのポイント
ヘイジーIPAと一口に言っても、ブルワリーごとに個性は大きく異なります。自分好みの一杯を見つけるために、以下の4つのポイントを参考にしてみてください。
ポイント1:苦味の強さ(IBU)で選ぶ
IBU(International Bitterness Units=国際苦味単位)は、ビールの苦味を数値化したものです。ヘイジーIPAのIBUは一般的に20〜40の範囲ですが、この数値の違いによって飲み心地は大きく変わります。
- **IBU 20〜25程度**:苦味がほとんど感じられず、フルーツジュースのような飲み口。クラフトビール初心者におすすめです。ヤッホーブルーイングの「満天クライマー」や伊勢角屋麦酒の「ねこにひき」がこのゾーンに該当します。
- **IBU 25〜35程度**:適度な苦味がフルーティーさと調和し、バランスの取れた味わい。ヘイジーIPAの王道ともいえるゾーンです。
- **IBU 35〜40程度**:しっかりとした苦味を感じられ、IPAらしい飲みごたえも求める方向け。志賀高原ビールのHazy IPAなどが該当します。
ポイント2:ホップの香り(シトラス系 / トロピカル系)で選ぶ
ヘイジーIPAのフレーバーの個性は、使用されるホップの品種によって大きく左右されます。代表的なホップ品種とその香りの傾向を把握しておくと、自分好みの一杯を選びやすくなります。
- **Citra(シトラ)**:グレープフルーツ、ライム、レモンなどの柑橘系アロマが主体。爽やかでシャープな印象です。
- **Mosaic(モザイク)**:マンゴー、パパイヤ、ブルーベリーなど多層的な香り。名前のとおり「モザイク」のように複雑です。
- **Galaxy(ギャラクシー)**:パッションフルーツ、ピーチの華やかなトロピカルアロマ。オーストラリア産の人気ホップです。
- **Simcoe(シムコー)**:松脂、アプリコットの香り。やや苦味寄りのキャラクターを持ちます。
- **Amarillo(アマリロ)**:オレンジ、タンジェリンの甘い柑橘香。親しみやすい香りが特徴です。
シトラス系の爽やかな香りが好みならCitraやAmarillo主体の銘柄を、トロピカル系の甘い香りが好みならMosaicやGalaxy主体の銘柄を選ぶとよいでしょう。商品ラベルやブルワリーの公式サイトに使用ホップが記載されていることが多いので、チェックしてみてください。
ポイント3:アルコール度数で選ぶ
ヘイジーIPAのABV(Alcohol By Volume=アルコール度数)は5〜8%と幅広い範囲に分布しています。
- **5〜6%**:日常的に楽しめるセッション寄りの度数。食事と合わせやすく、複数杯飲んでも疲れにくいのが魅力です。
- **6〜7%**:ヘイジーIPAの最も一般的なゾーン。フレーバーの厚みと飲みやすさのバランスが良好です。
- **7〜8%以上**:ダブルIPA、インペリアルIPAに近い濃厚さ。ホップの風味が凝縮され、ゆっくりと味わうのに適しています。COEDOの「時鐘江戸俤」(7.0%)はこのカテゴリーです。
暑い季節やアウトドアでは低めのABV、冬の夜にじっくり味わいたいときは高めのABVを選ぶなど、シーンに応じて使い分けるのも楽しみ方の一つです。
ポイント4:価格帯で選ぶ
クラフトビールは大手ビールと比較して価格が高めですが、ヘイジーIPAの中でも価格帯には幅があります。
- **300円前後**:ヤッホーブルーイングの「満天クライマー」など、コンビニで購入できる手頃な銘柄。まずはこのゾーンから試してみるのがおすすめです。
- **500〜650円**:国産クラフトブルワリーの定番商品が集中するゾーン。品質と価格のバランスが最も良い価格帯です。
- **700〜1,000円以上**:限定醸造品、インペリアル系、海外輸入品など。特別な日やギフトに適しています。
初めてヘイジーIPAを試す方は、まずコンビニで手に入る手頃な銘柄から始めて、気に入ったらクラフトビール専門店やブルワリーのオンラインショップでさまざまな銘柄を試していくのがよいでしょう。
ヘイジーIPAに合う料理・フードペアリング
ヘイジーIPAのジューシーでフルーティーな味わいは、料理との相性も抜群です。ここでは、具体的な料理とのペアリングをご紹介します。
| 料理ジャンル | おすすめメニュー | 相性の理由 |
| 揚げ物 | フィッシュアンドチップス、鶏の唐揚げ | ホップの穏やかな苦味とカーボネーションが油分を爽やかに流してくれます。ヘイジーIPAのフルーティーさがレモンの代わりとなり、揚げ物の旨みを引き立てます |
| スパイス料理 | タイカレー、タコス、グリーンカレー | ヘイジーIPAのトロピカルなフレーバーが、東南アジア料理やメキシカンのスパイシーさと好相性。ホップの香りがスパイスの香りと調和し、辛味を穏やかに包み込みます |
| チーズ | モッツァレラ、ブリーチーズ、カマンベール | クリーミーなチーズのまろやかさと、ヘイジーIPAのシルキーな口当たりが美しくマッチ。特にフレッシュチーズとの組み合わせは絶品です |
| シーフード | エビのグリル、魚介のセビーチェ、牡蠣フライ | ヘイジーIPAの柑橘系アロマが魚介の生臭さを消し、素材の甘みを引き立てます。レモンを搾る感覚でヘイジーIPAを合わせてみてください |
| フルーツ・デザート | マンゴープリン、パッションフルーツのタルト、柑橘系のサラダ | ヘイジーIPAのトロピカルフルーツ香と同系統のフルーツを合わせる「同調ペアリング」。互いのフルーティーさが増幅し合い、デザート感覚で楽しめます |
| ハンバーガー | チーズバーガー、アボカドバーガー | 肉のジューシーさとヘイジーIPAのジューシーな味わいが共鳴。特にアボカドのクリーミーさとオーツ麦由来のまろやかさが好相性です |
ペアリングの基本原則
ヘイジーIPAのフードペアリングにおける基本的な考え方は、大きく2つに分けられます。
1つ目は「同調」の考え方です。ヘイジーIPAのフルーティーさやクリーミーさに合わせて、同様の特徴を持つ料理を合わせる方法です。トロピカルフルーツを使ったサラダや、クリーミーなチーズなどが好例です。
2つ目は「対比・洗浄」の考え方です。揚げ物の油分やスパイス料理の辛味に対して、ヘイジーIPAのカーボネーション(炭酸)とホップの苦味で口中をリセットする効果を活用します。フィッシュアンドチップスや唐揚げとの組み合わせはこの原則に基づいています。
ヘイジーIPAの美味しい飲み方
せっかくのヘイジーIPAも、飲み方によってその魅力が半減してしまうことがあります。以下のポイントを押さえて、最大限の美味しさを引き出しましょう。
適温は4〜8度C
ヘイジーIPAの最適な飲用温度は4〜8度Cです。通常のラガービールよりもやや高めの温度が推奨されます。
キンキンに冷やしすぎると、ヘイジーIPAの最大の魅力であるホップの香りやフルーティーなフレーバーが感じにくくなってしまいます。冷蔵庫から出して5〜10分ほど常温に置いてから飲み始めると、温度の変化とともに香りが開いていくのを楽しむことができます。
グラスはチューリップ型がベスト
ヘイジーIPAを最大限に楽しむなら、グラス選びも重要です。おすすめはチューリップ型グラス(テクグラスとも呼ばれます)です。
チューリップ型グラスは、上部がやや内側にすぼまった形状をしており、ホップの香りをグラス内に閉じ込める効果があります。口に運ぶたびに凝縮された香りが鼻を通り抜け、ヘイジーIPAのアロマを存分に堪能できます。
チューリップ型グラスが手元にない場合は、ワイングラスやIPAグラスでも代用可能です。逆に避けたいのは、口が大きく開いたジョッキやタンブラー型。香りが拡散してしまい、ヘイジーIPAの持ち味が活かしきれません。
注ぎ方は泡少なめで
ヘイジーIPAを注ぐ際は、泡を立てすぎないことがポイントです。
缶や瓶のヘイジーIPAには、酵母やホップの成分が沈殿していることがあります。注ぐ前に缶を1〜2回ゆっくりと転がして、沈殿物を均一に混ぜてください。急激に振ると泡が噴き出す原因になるので、あくまで穏やかに行いましょう。
グラスに注ぐときは、最初はグラスを45度に傾けてゆっくりと注ぎ、半分ほど注いだらグラスを起こしてわずかに泡を立てます。泡の厚さは1〜1.5cm程度が理想です。過度な泡立ちは、ホップの繊細なアロマを逃がしてしまう原因になります。
鮮度が命――早めに飲むべし
ヘイジーIPAは、他のビアスタイルと比較して特に鮮度が重要です。ドライホッピングで加えたホップの香り成分(テルペン類やチオール類)は時間の経過とともに酸化し、劣化しやすい性質を持っています。
購入後はできるだけ早く飲むことをおすすめします。目安として、缶詰め日から60日以内が最も美味しく楽しめる期間です。保管する際は、必ず冷蔵庫で立てた状態で保管してください。常温保管や横置きは品質劣化の原因になります。
よくある質問
Q1. ヘイジーIPAの「ヘイジー」とはどういう意味ですか?
「ヘイジー(Hazy)」は英語で「かすんだ」「霧がかった」「濁った」という意味です。その名のとおり、グラスに注いだときに白く濁った外観が特徴であることから、この名前が付けられています。日本語では「白濁IPA」と呼ばれることもあります。濁りの原因は、ドライホッピングで生じるタンパク質とポリフェノールの結合体、低凝集性の酵母、そしてオーツ麦や小麦由来のタンパク質です。
Q2. ヘイジーIPAは苦くないのですか?初心者でも飲めますか?
ヘイジーIPAの苦味は、アメリカンIPAやウエストコーストIPAと比較すると控えめです。IBU(国際苦味単位)で見ると、アメリカンIPAが40〜70 IBUであるのに対し、ヘイジーIPAは20〜40 IBU程度です。特に本記事で紹介したヤッホーブルーイングの「満天クライマー」や伊勢角屋麦酒の「ねこにひき」は苦味がとても穏やかで、ビール初心者の方にもおすすめです。ただし、全てのヘイジーIPAが低苦味というわけではなく、ブルワリーによってはしっかりとした苦味のものもありますので、IBU値や商品説明を参考に選んでみてください。
Q3. ヘイジーIPAはどこで買えますか?
ヘイジーIPAの購入方法は主に4つあります。
1つ目はコンビニエンスストアです。ヤッホーブルーイングの「満天クライマー」はローソンで購入可能で、最も手軽な入手方法です。
2つ目は酒屋・クラフトビール専門店です。やまや、リカーマウンテン、びあマなどの専門店では国産・海外を問わず幅広い品揃えがあります。
3つ目はオンライン通販です。各ブルワリーの公式オンラインショップ、Amazon、楽天市場などで購入できます。特に地方のブルワリーの商品はオンライン通販が確実です。
4つ目はブルワリー直売・タップルームです。醸造所に併設されたタップルームでは、最も新鮮な状態のヘイジーIPAを楽しめます。缶や瓶に詰める前の出来立てを味わえる贅沢な体験です。
鮮度が重要なヘイジーIPAは、できるだけ回転の良い店舗で購入するか、ブルワリーから直接購入するのがベストです。
Q4. ヘイジーIPAの賞味期限はどのくらいですか?保管方法は?
ヘイジーIPAの一般的な賞味期限は、製造日から90〜180日程度です。ただし、ホップの香りを最大限に楽しむためには、製造日(缶詰め日)から60日以内に飲むことをおすすめします。
保管方法としては、以下の点に注意してください。
- 必ず**冷蔵保管**(4〜8度C)してください。常温保管はホップの香りの劣化を早めます
- 缶や瓶は**立てた状態**で保管してください。横置きにすると、沈殿した酵母やホップ成分が液体と広い面積で接触し、フレーバーに影響を与える可能性があります
- **直射日光**を避けてください。特に瓶の場合、光によって「日光臭(スカンク臭)」が発生する原因になります
Q5. ヘイジーIPAとジューシーIPAの違いは何ですか?
「ヘイジーIPA」と「ジューシーIPA」は、実質的にはほぼ同じスタイルを指しています。ただし、ニュアンスの違いがあります。
「ヘイジーIPA」は主に外観の特徴(濁り=ヘイズ)に着目した呼び名です。一方、「ジューシーIPA」は味わいの特徴(ジューシーなフルーツ感)に着目した呼び名です。同様に「ニューイングランドIPA(NEIPA)」は発祥地に着目した呼び名で、これら3つはいずれも同じビアスタイルを異なる角度から表現したものです。
ビアコンペティション(ビール品評会)では、BJCP(Beer Judge Certification Program)の2021年改訂ガイドラインにおいて「Hazy IPA」として正式なスタイル分類が設けられています。
Q6. 自宅でヘイジーIPAを作ることはできますか?
ホームブルーイング(自家醸造)でヘイジーIPAを作ることは技術的には可能ですが、日本では酒税法により、アルコール度数1%以上の酒類を無免許で製造することは禁止されています。ただし、アルコール度数1%未満の「ビールテイスト飲料」を作ることは法律上問題ありません。
もし本格的にビール醸造に興味がある方は、醸造体験ができるブルワリーやビール醸造ワークショップに参加してみることをおすすめします。プロの醸造家の指導のもとで、ヘイジーIPAの醸造工程を学ぶことができます。
Q7. ヘイジーIPAのカロリーはどのくらいですか?
ヘイジーIPAのカロリーは、一般的に350mlあたり180〜250kcal程度です。通常のビール(350mlあたり140〜160kcal程度)と比較するとやや高めですが、これはヘイジーIPAのアルコール度数が高めであること、そしてオーツ麦や小麦などの副原料による残糖分が多いことが要因です。
糖質も通常のビールよりやや多い傾向にあります。健康面を意識される方は、ABVが低めの銘柄を選ぶか、飲む量を調整するとよいでしょう。近年では、低アルコールやノンアルコールのヘイジーIPAスタイル商品も登場し始めています。
まとめ
本記事では、ヘイジーIPAの基礎知識から、おすすめ12選、選び方のポイント、フードペアリング、そして美味しい飲み方まで幅広くご紹介しました。
ヘイジーIPAは、従来のIPAの概念を覆した革命的なビアスタイルです。濁った外観の奥に秘められたジューシーなフルーツ感、シルキーな口当たり、そして穏やかな苦味は、クラフトビール初心者からベテランまで幅広い層を魅了し続けています。
初めての方は、コンビニで手に入るヤッホーブルーイングの「僕ビール、君ビール。満天クライマー」や、伊勢角屋麦酒の「ねこにひき」あたりから試してみるのがおすすめです。そこで濁りの魅力に目覚めたら、ぜひWCBや志賀高原ビール、京都醸造といった個性派ブルワリーの銘柄にも挑戦してみてください。
チューリップ型グラスに注ぎ、4〜8度Cの適温で、トロピカルなアロマを存分に楽しみながら味わう――それがヘイジーIPAを最大限に堪能するための作法です。
この記事が、あなたにとって最高の一杯を見つける手助けになれば幸いです。

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