Googleトレンドによると、「クラフトビール」の検索量は毎年7〜8月にピークを迎え、2025年8月に年間最高値を記録しました(出典: Googleトレンド、2026年7月時点)。夏にクラフトビールを初めて買う人が増えるなか、「クラフトビールって生ビールとは違うの?」「居酒屋の生ビールとどう違う?」という疑問も急増しています。
結論から言うと、日本で流通しているビールの99%以上が「生ビール」です。つまり、クラフトビールの大半も生ビールに該当します。この2つはそもそも分類の軸が異なるため、混同すると自分好みのビールに出会う機会を逃してしまいます。
この記事では、クラフトビールと生ビールの違いを定義・製法・味わいなど5つの軸で比較します。比較表で全体像を把握し、それぞれの定義を深掘りし、最後にブルワー視点の味わいの違いまでお伝えします。
クラフトビールと生ビールの違いを一目で理解する比較表
まずは全体像を把握しましょう。クラフトビールと生ビールの違いを一覧表にまとめました。
| 比較項目 | クラフトビール | 生ビール |
|---|---|---|
| 分類の軸 | 醸造所の規模・独立性 | 熱処理の有無 |
| 定義の根拠 | 全国地ビール醸造者協議会(JBA)の基準(2018年制定) | ビール酒造組合の「特定用語の表示に関する基準」 |
| 対義語 | 大手メーカーの大量生産ビール | 熱処理ビール |
| 価格帯 | 350mlで300〜600円程度 | 350mlで150〜300円程度(大手缶ビール) |
| 味わいの特徴 | 多様なスタイル・個性的な風味 | スタイルによる(銘柄次第) |
| 市場シェア | 約1〜3%(2025年時点の推定) | 約99%(国産ビール全体に占める割合) |
| 代表例 | よなよなエール、インドの青鬼、常陸野ネストビール | アサヒスーパードライ、キリン一番搾り |
ここで注目すべきは、「クラフトビール」と「生ビール」はまったく異なる軸の分類だということです。クラフトビールは「誰がどう造るか」を基準にした分類であり、生ビールは「熱処理をしたかどうか」を基準にした分類です。そのため、「クラフトビールであり、かつ生ビールでもある」というビールが大多数を占めています。
生ビールとは?意外と知らない日本独自の定義
生ビールの正式な定義
「生ビール」と聞くと、居酒屋でジョッキに注がれるビールをイメージする方が多いでしょう。しかし、生ビールの「生」は提供方法ではなく、製造工程に関する用語です。
ビール酒造組合が定める「特定用語の表示に関する基準」では、生ビール(ドラフトビール)を「熱処理(パスチャライゼーション)をしていないビール」と定義しています。つまり、缶ビールであっても瓶ビールであっても、熱処理をしていなければ「生ビール」です。
| 項目 | 生ビール | 熱処理ビール |
|---|---|---|
| 定義 | 熱処理をしていないビール | 50〜60℃で加熱殺菌されたビール |
| 酵母の除去方法 | ろ過(フィルタリング) | 加熱殺菌 |
| 味わいの傾向 | フレッシュでクリア | まろやかでコクがある |
| 賞味期限 | やや短い(約9か月) | やや長い |
| 日本での流通割合 | 約99% | 約1% |
| 代表銘柄 | スーパードライ、一番搾り、プレモル | キリンクラシックラガー、赤星(サッポロラガービール) |
生ビール比率99%に至った歴史
日本における生ビールの普及は、ろ過技術の進歩とともに急速に進みました。
| 年代 | 生ビール比率 | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 1977年 | 約10% | ろ過技術の導入初期 |
| 1987年 | 約50% | アサヒスーパードライ発売(1987年) |
| 1993年 | 約70% | ろ過技術の成熟 |
| 1996年〜 | 約99% | キリンラガーの生ビール化で一気に普及 |
現在はろ過技術がさらに進歩しており、国産ビールのほぼすべてが生ビールです。つまり、「生ビールだから特別」ということではなく、むしろ熱処理ビールのほうが希少な存在なのです。
クラフトビールの定義と3つの条件
クラフトビールの公式な定義
クラフトビールの定義は国によって異なりますが、日本では全国地ビール醸造者協議会(JBA)が2018年5月に制定した基準が広く知られています。
JBAが定めるクラフトビールの条件は以下の3つです。
| 条件 | 内容 | 具体的な基準 |
|---|---|---|
| 独立性 | 大手ビールメーカーの資本から独立している | 1994年の酒税法改正以前の大手メーカーと資本関係がない |
| 小規模醸造 | 1回の仕込み量が小さい | 麦汁の製造量が1回20キロリットル以下 |
| 個性・地域性 | 伝統的製法か地域特産品を使用 | 地域に根付いたビール造りを行っている |
クラフトビール市場の成長データ
国税庁「酒のしおり」のデータによると、ビール系の酒類製造免許場数は2019年の約422場から2026年2月時点で950場超へと倍増しています。わずか7年で醸造所の数が2倍以上に増えた計算です。
また、経済構造実態調査(2023年)によると、食料品全体の出荷金額は約29兆4,285億円に達しており、その中でビール類は大きな割合を占めています(出典: e-Stat 統計表ID: 0004028789)。クラフトビール市場は全体の1〜3%と推定されていますが、醸造所数の増加ペースを見ると、そのシェアは着実に拡大中です。
1994年の酒税法改正がクラフトビールを生んだ
日本のクラフトビール文化は、1994年4月の酒税法改正に端を発しています。この改正で、ビールの最低製造量が年間2,000キロリットルから60キロリットルに大幅に引き下げられました。これにより、小規模な醸造所でもビール製造免許を取得できるようになり、全国各地に「地ビール」が誕生しました。
当初は「地ビール」と呼ばれていましたが、2010年代に入ると品質とブランディングの向上に伴い「クラフトビール」という呼称が定着しました。地ビールとクラフトビールの違いについては、詳しく解説した記事もあわせてご覧ください。
クラフトビールと生ビールの5つの違い
ここからは、クラフトビールと生ビールの違いを5つの観点から掘り下げて解説します。
違い1: 分類の基準が根本的に異なる
最も重要な違いは、分類の基準そのものです。
- 「クラフトビール」は「誰がどのように造るか」(醸造所の規模・独立性)で分類
- 「生ビール」は「どう仕上げるか」(熱処理の有無)で分類
この違いを理解すれば、「クラフトビールは生ビールではない」という誤解が解けます。実際には、クラフトビールの大多数は熱処理をしていないため、「クラフトビールかつ生ビール」に該当します。
違い2: 味わいの多様性
大手メーカーの生ビールは、ピルスナーと呼ばれるスタイルが主流です。すっきりとしたのど越しと爽快感を特徴とし、広く親しまれています。
一方、クラフトビールはIPA、スタウト、ヴァイツェン、サワーエールなど、100種類以上のスタイルを楽しめます。フルーティーなもの、苦味が強いもの、スパイシーなもの、酸味のあるものなど、風味のバリエーションは多岐にわたります。クラフトビールの種類を知ることで、自分好みの1杯に出会いやすくなります。
違い3: 価格帯と入手性
| 項目 | 大手の生ビール(缶) | クラフトビール(缶) |
|---|---|---|
| 350ml の価格帯 | 150〜250円 | 300〜600円 |
| 入手しやすさ | コンビニ・スーパーで手軽に購入可能 | 専門店・オンラインショップが中心 |
| 限定品の有無 | 季節限定が年数回 | 限定醸造品が頻繁にリリースされる |
クラフトビールが高価になりがちな理由は、小規模醸造ゆえの生産コストの高さにあります。大手メーカーのように大量仕入れによる原料コスト削減が難しく、1本あたりの製造コストが高くなるのです。クラフトビールの値段の相場について、より詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
違い4: 製造規模と流通経路
大手メーカーは年間数万〜数十万キロリットルのビールを製造し、全国のコンビニやスーパーに流通させています。製造ラインは高度に自動化されており、品質のばらつきがほとんどありません。
クラフトビールの醸造所は、1回の仕込みが数百リットル〜数キロリットル規模です。ブルワーが直接仕込みから発酵管理、品質チェックまでを行い、ロットごとの微妙な風味の変化も個性として受け入れられます。流通は地元の飲食店や自社タップルーム、オンラインショップが中心です。
違い5: ビールとの向き合い方
大手の生ビールは「のど越しを楽しむ」飲み方が主流です。仕事終わりの1杯、バーベキューでの乾杯など、爽快感を求めるシーンで活躍します。
クラフトビールは「味わいを楽しむ」飲み方が向いています。グラスに注いで香りを楽しみ、温度変化による風味の変化を味わう。料理とのペアリングを試す。そうした「体験としてのビール」がクラフトビールの楽しみ方です。ビールの適温と飲み方ガイドも参考にしてみてください。
ブルワー視点で見るクラフトビールと生ビールの味わいの違い
ここでは、醸造の現場に目を向けた独自の切り口で違いを解説します。
熱処理の有無が味わいに与える影響
醸造現場では、熱処理ビールと非熱処理ビール(生ビール)の味わいの違いは「丸みと角」で表現されることがあります。熱処理を施すとビールの味わいが「丸く」なり、角が取れたまろやかな口当たりになります。一方、生ビールはフレッシュで「角のある」シャープな味わいが特徴です。
大手メーカーの熱処理ビールであるキリンクラシックラガーやサッポロラガービール(赤星)に、コクのあるまろやかな味わいを感じるのはこのためです。
クラフトビールにおける「非ろ過・無殺菌」の世界
クラフトビールの中には、ろ過も熱処理も行わず、酵母が生きたまま瓶詰め・缶詰めされるものがあります。これは厳密には「生ビール」の範疇に含まれますが、さらに一歩進んだ「無ろ過生ビール」です。
酵母が残ることで、独特の複雑な風味やまろやかな口当たりが生まれます。ヘイジーIPAのような濁りのあるスタイルはその代表例です。ただし、酵母が生きているぶん保存条件には注意が必要で、冷蔵保存が基本となります。クラフトビールの保存方法については、別記事で詳しく解説しています。
ブルワリーのタップルームで感じる「鮮度の違い」
クラフトビールを最も新鮮な状態で味わえるのが、醸造所に併設されたタップルームです。タップルームでビールを飲むと、缶や瓶では感じられなかった香りの広がりやホップの鮮烈さに驚くことがあります。これは、流通過程での酸化や温度変化がないためです。
大手メーカーの工場見学でも「できたてのビール」が試飲できますが、クラフトビールのタップルームでは数日前に仕込んだばかりのビールを味わえることもあります。この「醸造所で飲む鮮度の違い」は、ビール好きなら一度は体験する価値があります。
クラフトビールと生ビールに関するよくある質問
Q1: 居酒屋の「生ビール」はクラフトビールですか?
居酒屋のサーバーから注がれる「生ビール」は、一般的にアサヒスーパードライやキリン一番搾りなどの大手メーカーの製品です。これらは「生ビール」ですが「クラフトビール」ではありません。ただし、近年はクラフトビールの樽生を取り扱う飲食店も増えています。
Q2: クラフトビールは全部「生ビール」ですか?
ほとんどのクラフトビールは生ビール(非熱処理)ですが、すべてではありません。意図的に熱処理を施して味わいに丸みを出すクラフトビールも存在します。ラベルに「生」の表記がないものは熱処理されている可能性があります。
Q3: 缶ビールでも「生ビール」と呼べるのですか?
はい。生ビールの「生」は容器や提供方法ではなく、「熱処理をしていない」という製造工程を指します。コンビニで購入する缶ビールの大多数は「生ビール」に該当します。
Q4: クラフトビールと大手ビールの原料に違いはありますか?
基本的な原料(麦芽・ホップ・水・酵母)は共通しています。ただし、クラフトビールでは柑橘の皮、コリアンダー、フルーツ、コーヒー、ハチミツなど副原料を積極的に使うスタイルが多いのが特徴です。2018年の酒税法改正で副原料の範囲が拡大され、個性的なレシピがさらに増えました。
Q5: 「ドラフトビール」と「生ビール」は同じ意味ですか?
日本では「ドラフトビール(draft beer)」と「生ビール」はほぼ同義で使われています。ただし、海外では「ドラフトビール」は「樽から注がれるビール」を指すことが多く、日本の「熱処理をしていないビール」という定義とは異なります。海外でビールを楽しむ際は注意してください。
Q6: クラフトビール初心者は何から飲み始めるのがおすすめですか?
大手の生ビール(ピルスナースタイル)に慣れている方には、まずペールエールやゴールデンエールがおすすめです。ピルスナーと同じく飲みやすい味わいでありながら、ホップの華やかな香りが楽しめます。そこからIPAやヴァイツェンなど個性的なスタイルに広げていくと、クラフトビールの奥深さを段階的に体験できます。[クラフトビールとは何か](https://brewhub.jp/beer/what-is-craft-beer/)をまず理解してから選ぶと、より楽しめるでしょう。
Q7: クラフトビールの醸造所は日本にいくつありますか?
国税庁「酒のしおり」のデータによると、ビール系の酒類製造免許場数は2026年2月時点で全国950場を超えています。2019年の約422場と比較すると、7年間で2倍以上に増加しました。[醸造免許の取得方法](https://brewhub.jp/brewery-2/brewing-license-acquisition-guide/)に興味がある方は、詳しい解説記事もご覧ください。
関連記事: クラフトビール初心者の選び方ガイド|味の好みで見つける最初の1本
まとめ:違いを知ればビールの楽しみ方が広がる
クラフトビールと生ビールの違いについて、改めてポイントを整理します。
- 「生ビール」は熱処理をしていないビールの総称であり、日本のビールの99%以上が該当する
- 「クラフトビール」は小規模・独立・個性的な醸造所が造るビールで、JBAが定めた3つの条件がある
- 両者は分類の軸が異なるため、「クラフトビールかつ生ビール」というビールが大多数を占める
- クラフトビールの魅力は100種類以上のスタイルによる味わいの多様性にある
- 全国の醸造所数は950場超と7年で倍増し、クラフトビール市場は拡大を続けている
ビールの世界は、「とりあえず生」の先に広がっています。まずは近くのブルワリーやクラフトビール専門店で、大手の生ビールとは異なるスタイルを1杯試してみてはいかがでしょうか。
参考情報
- サントリー お客様センター「生ビールとはなんですか?」(https://www.suntory.co.jp/customer/faq/001695.html)
- 全国地ビール醸造者協議会「クラフトビールとは」(https://beer.or.jp/about/)
- 国税庁「酒のしおり(令和7年7月)」酒類等製造免許場数の推移(https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2025/index.htm)
- 経済構造実態調査(2023年)ビール・発泡酒等の品目別出荷金額(e-Stat 統計表ID: 0004028789)
- Googleトレンド「クラフトビール」検索動向(2026年7月時点、ピーク: 2025年8月、年間最高値100)
- ドリンクジャパン「生ビールの『生』とは?原材料・造り方から醸造・販売に必要な資格まで解説」(https://www.drinkjapan.jp/ja-jp/blog/article_039.html)
- よなよなエール公式「『生ビール』とは?瓶ビールや缶ビールとの違いは?」(https://yonasato.com/column/guide/detail/about_draftbeer_280802/)
- 東京国税局「ビール・発泡酒に関するもの」(https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/sake/abc/abc-beer.htm)


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